2020年7月15日

中小企業のテレワーク導入を阻む課題とは?

多様な働き方を実現する手段として、大企業を中心に導入が進んでいるテレワーク。一方で、まだ導入に踏み切れない中小企業では、どのような課題があるのでしょうか。

1.  なぜテレワークが必要なのか?~緊急時と平常時のテレワークの違い~

平常時のテレワーク:働き方改革とデスクワークの生産性向上を実現

テレワークは、働き方改革を実現する切り札として普及が期待され、ICT環境の進化に対応したテレワークのガイドラインが刷新された2017年を契機に導入が加速しました(*1)。テレワークによって、ワークライフバランスが実現するだけでなく、デスクワークの生産性を向上するなどの成果も報告されています。

それだけでなく、平常時でのテレワーク導入には、導入企業にとって以下のようなメリットもあります。
・育児、介護などでの離職防止
・柔軟な働き方による有能多用な人材の確保
・オフィススペースや紙、交通費などのコスト削減

仕事を続けたくても、出産や育児、介護などの理由から退職を選ぶ従業員も多いという現実はありますが、テレワーク制度を利用することで、女性の離職率をマイナス40%と大幅に減少させた企業もあります(*2)。こうした働きやすい環境づくりへの取組みは、国の方針である働き方改革とも合致するため、企業イメージのアップにもつながり、有能な人材の雇用にもつながる可能性があります。さらに、テレワークが定着すればオフィススペースの削減や紙や交通費などのコストダウンも期待できます。

非常時のテレワーク:従業員の命を守り、BCP対策を実現

テレワークに対する世間の認識が一気に変わり、導入が急速に進んだきっかけとなったが、2020年以降の新型コロナウイルス感染症対策としてのテレワークです。感染拡大防止のためには、「密閉・密集・密接」の「3つの密」を避ける行動が重要とされています。通勤ラッシュや人混みなどの、人と人との接触機会や感染の危険性を減らす目的で、テレワーク勤務者が一気に増加しました。

非常時のテレワークは、主にBCP対策(事業継続性計画)としての意味合いが強いといいます。2011年の東日本大震災や、2019年の台風被害などのように、出社ができない状態または難しい状態での最低限の事業継続や従業員の安全の確保をおこない、できるだけ早期の平時運転への復旧をめざす必要がありました。このように、非常時には生産性の向上というより、BCPを優先とした実施の必要に迫られることになります。

非常時だけでなく、平常時にも導入が進むテレワーク

しかし、非常時だけテレワークを使おうとしても円滑な運用が難しく、平常時からテレワークを運用しておくことが、非常時に有効な対策となることが認識されるようになりました。このことは後述する図2でも示されています。コロナウイルス感染症の収束後も、テレワークは「新しい生活様式」の働き方の一部として定着し、さらに利用が拡大すると考えられます。

導入に際して多少のコストは発生するのですが、こうした体制作りは将来への投資と考えることもできます。有事の際の事業継続だけでなく、生産性の向上や従業員満足度向上による離職率の低下や企業イメージのアップなど、長期的な目で見た場合、導入の設備投資コストに見合う十分なメリットがあるといえます。

2.  テレワークの導入状況と、導入にあたっての課題

続いて、テレワーク導入状況について、従業員規模別に解説いたします。東京商工会議所から2020年4月8日に発表された、会員企業への「新型コロナウイルス感染症への対応について」のアンケート調査の結果(*3)において、全体としてテレワークを実施中の企業は26.0%、実施検討中が19.5%、実施予定無しが54.4%でした。つまり、約1/4の企業がテレワークを実施していたことになります。

それに対して、いわゆる小規模事業者を含む従業員が50人未満の企業では、実施中は14.4%と、10%以上低い結果になります。さらに、従業員数300人以上の企業では、57.1%の企業が導入済みであり、40%以上も高い結果です。つまり、従業員規模が大きい企業ほど、テレワークの実施率が高いといえます(図1)。

図1:テレワークの取組み状況<従業員規模別>

テレワークの取組み状況 <従業員規模別>

また、特にテレワーク導入が少ない、従業員数50人未満の企業では、「テレワーク可能な業務がない」を除くと、次の4項目が、テレワークを導入するための課題となっていることがわかります(図2)。

1.社内体制の整備(仕事の管理、労務管理、評価など)
2.パソコンやスマホ等の機器やネットワーク環境(LAN等)の設備が十分ではない
3.セキュリティ上の不安がある
4.クラウドなどのソフトウェアの整備が十分ではない

図2:テレワーク実施を検討するにあたっての課題

テレワーク実施を検討するにあたっての課題

このなかでも、「パソコンやスマホ等の機器やネットワーク環境(LAN等)の設備が十分ではない」と「クラウドなどのソフトウェアの整備が十分ではない」を合わせたハードウェアやソフトウェアなどテレワーク環境の整備に関する問題は、46.6%と非常に多くの企業が課題としてあげています。とはいえ、テレワーク実施に利用するツールは、クラウド型ツールを筆頭に機能も充実し、月額制で契約できる比較的安価なサービスも増えてきています。また、セキュリティに関しても、ビジネスユースを想定した高いセキュリティ機能を備えたものもあります。

3.  テレワークに必要なICT製品の選択

テレワークに用いられる代表的なサービスと、その選択のポイントをご紹介いたします。

1.Web会議システム

テレワーク導入にあたって最も注目を集めているといえるアプリケーションです。企画業務など、主業務は自宅でも実施可能であるものの、社内外の会議は出社しなければできない職種も多いのではないでしょうか。

音声だけであれば電話会議でも可能ですが、人数が多くなった場合実施は容易ではありません。一方でWeb会議専用のアプリケーションでは、音声、相手の顔が見えるだけでなく、資料のアップロードや、自身のデスクトップ画面を共有できるなどさまざまな機能が備えられています。これらを活用することで実際に一つの場に集まって行う会議と同じ感覚で実施することができ、すぐに取組むメリットは大きいでしょう。

大人数の会議は、議事の進行の仕方も含めて事前に準備が必要です。単に音声で情報を届けるだけでなく、大人数のなかでも意見を拾い上げるための議長・事務局の立場からの工夫や、社内機密となる資料の扱いなどにも配慮していくことが求められます。
会議自体はグループウェアなどでも開催可能ですが、たとえばWeb会議専用のサービスでは投影された資料の「スクリーンショット」ができないようガードがかけられているものもあり、資料の漏えいリスクを下げることが可能です。これらのツールの選定にあたっては、社内の方針に合わせて必要な機能を洗い出した上で検討することが大切です。

2.仮想デスクトップ

「仮想デスクトップ」とは、仮想PC環境をサーバー上に作成し、パソコンなどからアクセスする仕組みです。この最大のメリットは、利用する端末を選ばないことです。
従業員のプライベート利用のものやサテライトオフィスのパソコン、タブレットなど、アクセスする端末が毎回異なっても、データはサーバー上に保存されているため同一で、利便性があります。
このようなフレキシブルな運用が可能なことからテレワークに最適な仕組みといえます。
クラウド型のサービスであれば、初期費用を抑え、スモールスタートで導入可能なものもあります。

一方で社外から会社内のデータへのアクセスを可能にするということは、情報漏洩のリスクも同時に抱えることになります。そのため、単なるサービスの利便性だけで選ぶのではなく、サービスに備えられたセキュリティ、運用コストなどから総合的に検討・選択していくことが望ましいでしょう。

3.グループウェア・オンラインストレージ

グループウェアは社内外の関係者と情報を共有する総合的なアプリです。社員のスケジュール共有など、業務効率化を目的とし、さまざまな機能が備えられています。掲示板やファイルの共有もよく使われている機能です。さらに、会議室や設備の予約、社内の電子決裁まで活用するケースも増えています。

ファイル共有機能があれば、オンラインストレージを利用したファイルを共有することで、いつでもどこでも必要なファイルにアクセスすることができるようになります。頻繁にアクセスする資料はオンラインストレージに格納することで、必要な時に資料が見ることができないというトラブルを回避し、さらに情報の一元管理によって業務の生産性が向上します。

これらのサービスも、クラウド型であれば自社でサーバーを持つ必要もなく、コストパフォーマンスやセキュリティ対策に優れたものがあります。さらに、チャット機能を備えたものであれば、コミュニケーションのスピードが圧倒的に上がります。

4.  中小企業のテレワーク導入を支援する助成・補助制度

テレワークに必要なICTは、クラウド型サービスが中心ですので、初期導入コストは低く抑えられており、月々の利用料も高額でない場合がほとんどです。さらに、中小企業向けには、さまざまな助成・補助制度があり、初期導入コストをより一層削減することが可能です。

「テレワークを導入したいが、何から手をつけてよいかわからない」場合には、厚生労働省のテレワーク相談センターや、総務省のテレワークマネージャー派遣制度があり、無償のテレワーク導入コンサルティングや、豊富な資料の提供を受けることが可能です。

テレワークの助成や補助制度は、国、都道府県、市町村など、組織単位で行われているので、自社に合った制度を素早く見つけるのが難しいという問題がありますが、日本テレワーク協会のホームページには、テレワークに関する助成・補助制度を一覧できるページがあり便利です(*4)。

テレワークの導入は、企業経営に大きな効果をもたらしますが、導入は決して難しくありません。さらに、最近では中小企業を対象にした、助成・補助制度が充実してきました。
この機会に社内の業務や利用ツールを見直し、非常時の従業員の安全確保のためだけでなく、全社を挙げた働き方改革にもつながっていく、テレワーク導入を検討してはいかがでしょうか。

次のコラムでは、テレワーク導入の初歩ツールとしてもおすすめしている、Web会議システム/仮想デスクトップシステムの具体的な機能/活用シーンについてご紹介しています。

  

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