2020年11月30日

経営者の7割が「ハンコは不要」。それでもなぜハンコはなくならないのか

コロナ禍でのテレワーク推進と行政からの呼びかけで「脱ハンコ」への機運が高まっています。契約書などの社内書類の電子化による業務慣行の見直しなど、企業にはどんな備えが必要となってくるのでしょう。

1.  自社だけでは決められない中小企業にとっての契約書の電子化

菅内閣発足後直後の今年9月、河野太郎行革大臣がハンコ廃止を各府省に要請したことを契機に、「脱ハンコ」への機運が高まりました。行政手続きで現状行っている押印の99%は廃止できるとして、印鑑登録をしていない認め印による手続きはすべて廃止するとの方針を明らかにしたのです。これまで長らく続いてきた書面押印という業務慣行が、抜本的に見直されようとしています。

コロナ禍によるテレワークの普及も、こうした流れに拍車をかけました。緊急事態宣言下でも書類の押印作業のためだけに「やむなく出社」を強いられるケースが少なからずあり、ハンコの存在そのものが問われたのです。

実際に企業の経営者は、ハンコについてどのように考えているのでしょう。アドビが従業員300名以下の中小企業を対象に行った調査(※)によると、経営者の74.7%が「ハンコの慣習はなくしたほうがよい」と回答しています。さらにハンコの生産性に与える影響については「生産性を下げていると思う」という回答が72.6%と大半を占めました。

しかし、直近1年間における契約時のハンコ利用率は83%を占めており、電子契約は17.8%にとどまっています。廃止のハードルについて最も多い回答は「取引先の契約方法に従う必要がある」(51.4%)というものです。このことからも「ハンコ廃止」を望む中小企業の経営者にとって、自社の意向だけでは踏み切れないというジレンマのあることが推察されます。

2.  すでに6割強の企業が、電子契約に前向きな取り組みを実施

こうしたジレンマを抱える中小企業にとっても、今後ハンコを使う機会は減る方向にあるでしょう。コロナ禍で在宅勤務が増え、働き方改革による業務の効率化が求められているからです。ハンコの代わりを果たす電子契約に関しては、現在、企業の取り組みはどうなっているのでしょうか。

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が2018年に行った従業員数50人以上の国内企業調査(※)によると、すでに43.1%の企業で電子契約を採用しています。採用を検討しているという企業(20.6%)と併せると、全体で63.7%が電子契約について前向きに取り組んでいることがわかります。2016年の56.5%と比べても、着実に増えている傾向です。

電子契約では双方の合意が必要です。そのため導入企業が増えれば増えるほど電子契約への対応が不可避となります。取引先が電子契約の場合には、企業はそれに対応しなければならないからです。

3.  契約書の電子化がもたらすメリットと社内ペーパーレスによる効果

電子契約については、すでに6割以上の企業が前向きに取り組んでいることがわかりました。では、メリットはどこにあるのでしょう。契約書をデジタル化した場合を例に取ると、企業にとってのメリットがいくつか見えてきます。

まず、挙げられるのがコストの削減です。書面契約での印紙代や郵送費用などが不要になります。さらに書類作成から取引先への郵送・返送という作業も不要になることで、契約成立までの時間を大幅に短縮できます。

契約書の作成、締結、保管といった一連のプロセスも可視化され、コンプライアンス強化も期待できます。サーバーやクラウド上に保管した契約書を随時、検索・確認できるので書類を保管するスペースもいらず、探す手間もかかりません。

一方で、企業にとっては電子契約の導入に伴う不安や懸念があるのも事実です。本来、契約書の目的は契約の合意内容を証拠として残すことですが、デジタルでそれが果たされるのかという疑問の声も多いようです。この点については電子契約でも電子署名やタイムスタンプによって有効性が証明されて法的効力を持ちますので、心配はありません。

ほかにも業務フローの変更に関する戸惑いや、セキュリティへの懸念といったこともあります。そうした場合の対策については、電子契約のサービス提供企業に相談してみることをおすすめします。用意されている導入マニュアルや説明会を受講することで、これらの懸念は解決に向かうはずです。ハンコ廃止によってペーパーレス化が実現できるのは、契約書にとどまりません。社内の稟議書や決裁書、各種届出なども電子化が可能です。これにより業務効率化やコンプライアンス向上、さらにテレワーク、リモートワークの推進につながります。

コロナ禍による働く環境の変化はもとより、業務効率化という意味でもメリットの大きい「脱ハンコ」。費用対効果や自社を取り巻く状況を見据えながら、さまざまなサービスの比較検討をしてみるのも有効な手段だといえそうです。

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