2019年2月4日

テレワークは中小企業には難しい?

オフィスに出勤せず仕事をするテレワーク。生産性を上げるため、中小企業はテレワークをどう実践すべきか、シリーズで取り上げます。第1回目はテレワークの誤解について。

1. 誤解していませんか?テレワークのあれこれ

 一億総活躍社会実現のために、内閣府が推進している働き方改革。そのなかで、「ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」として「テレワーク」が注目されています。しかし、IT機器およびシステムの導入や就業規則の改定など、費用も手間もかかるので大企業向けの話ではないかと、諦めている中小企業も多いのではないでしょうか。まだまだハードルが高いと思われている中小企業のテレワークの実践について、一般社団法人 日本テレワーク協会(*1)事務局長の富樫美加さんからお話をうかがうシリーズ企画です。

 富樫さんによると、「テレワークについての情報はいろいろと入って来るが、『会社にとって本当にメリットはあるのか?』『業績は下がらないのか?』と戸惑っている中小企業関係者のみなさまは多くいらっしゃる」とのこと。そこで今回は、テレワークについてありがちないくつかの「誤解」について説明していただきます。

 

誤解その1:テレワークは大企業向け。中小企業では効果はない

 総務省の調査(*2)によると、大企業ではすでに23.0%が何らかの形でテレワークを導入し、一定の成果を上げているといわれています。そうはいってもそれは人員に余裕がある大企業の話で、中小企業では逆に業績が低下するのではないかと心配されている中小企業経営者の方もいらっしゃるかもしれません。実際に同調査では、従業員300人以下の導入企業の割合は10.2%に低下します。

 しかし、富樫さんによると「就業者は通勤などの移動時間や、同僚から話しかけられてつい雑談してしまったり、自分宛てではない電話の対応をしたりといった時間をテレワークによって短縮・削減できるため、時間にゆとりが生まれ、より一層自分の作業に集中できます。また、離職防止や人材確保にも有効です。テレワークなどの制度が整備されており、働き方の自由度が高い企業かどうかは、新卒者など就業する側が、最近とても重視している部分でもあるからです。在宅勤務可能と記載しただけで、入社希望者は大幅に増加します。人材の有効活用、採用活動においても、中小企業がテレワークを導入するメリットはとても大きい」とのこと。

 国が推進する働き方改革において、労働生産性の向上は重要なテーマのひとつ。人員に余裕がない中小企業だからこそ、効率的な働き方を実現するためには、テレワークの導入が有効的なのです。

 

誤解その2:社内でテレワークに適した業務が思い浮かばない

 テレワークに向いた業務が自社にはない、またはテレワークをこなすには専門のスキルが必要だ、といった誤解も多いと思われます。前述の総務省の調査(P.5)でも、73.7%の企業が導入しない理由として「テレワークに適した仕事がない」と答えています。しかし富樫さんは、「テレワーク導入で、仕事の仕方そのものに見直しが発生します。オフィス勤務での無駄が見えることにより、現場に革新が起き、業務にかかわらずより効率のよい働き方に自然と変化していくのです」といいます。

 テレワークは、技術者、事務職、営業職、管理職など、多様な職種で実施されています。仕事の性質上、常に対面で行う必要性のあるもの、生産現場の作業などを除き、多くの仕事でテレワークは可能です。具体的な業務内容としては、資料・報告書の作成、データ入力・整理、会議への参加などがテレワークで行われています。そして、テレワークを導入した企業ほど、仕事の能率が上がるという調査結果もあります。総務省の「平成28年通信利用動向調査」(3 ICTと労働生産性について)によれば、テレワークを導入した企業は、未導入の企業と比べ1.6倍も生産性が高いという結果になっています (*3)。

2. 実はあなたの会社も知らぬ間にテレワークをしている?

 

誤解その3:テレワークには特別な機材が必要

 テレワークは携帯電話やスマートフォンからでもはじめられます。富樫さんは、「外出時に携帯電話やスマートフォンで業務を行ういったモバイルワークを、テレワークではないと思ってらっしゃる方は多いようです。しかしモバイルワークもテレワークの一部なんです。そう考えれば、みなさんすでにテレワークをはじめているのです」といいます。私たちは、携帯電話によってどこでも通話できる環境を手にしています。テレワークの定義は、「ICT(情報通信技術)を活用した、場所にとらわれない柔軟な働き方」ですので、実は携帯電話によってテレワークを行っていることになります。

 またスマートフォンでインターネット閲覧をするなど、データ通信ができる環境は、テレワークの基本的条件でもあります。会社と自宅など、離れた場所でもデータでのやりとりが可能であれば、テレワークはいつでもスタートできるとお考えください。

 

誤解その4:テレワークの導入にはお金がかかる

 テレワークをはじめるにあたって、何か特別な環境、システムが必要だと思われている方もいます。しかし先程も述べたように、携帯電話でどこでも通信ができることがテレワークの第一歩ですので、必ずしも大がかりな準備は必要ありません。たとえば、大量の紙の資料や、大きなシステム手帳を持ち歩かなくても、クラウドサービスを利用すれば、インターネット上でファイルやスケジュール等を管理して閲覧・編集などが可能になります。クラウドサービスは、無料ないし低価格で利用できるツールが各社から提供されています。自社に適した方法が見つかるまで、一定期間「お試し」で手軽なサービスを利用してみるのも有効です。また、新たにテレワークに取組む中小企業は、厚生労働省「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)」を利用すれば、費用の補助を受けられることがあります(*4)。テレワークは、誰にでも簡単にはじめられるのです。

3. テレワーク導入で成功した中小企業事例

 実際にテレワーク導入によって業務の効率が上がり、売上・利益率ともにアップした企業もたくさんあります。富樫さんは事例として、神奈川県にある、40名ほどの社員を抱える電気設備設計会社を紹介してくれました。

「その会社では、当初高齢の社員にテレワークを受け入れてもらえず、“顔を突き合わせて現場で指示をする自分たちのやり方が工事現場には一番だ”という反応だったそうです。しかし、高齢者が現場に行くのは体力的に難しくなりつつあったため、定年後の高齢者が経験の浅い現場作業員に、Webカメラを使って遠隔地から作業指示するという方法を実施して効果を実感し、これらの高齢者も“テレワークでなければ仕事にならない“」と認識が変化。現場に行かなくても自分たちの経験が生かせるようになり、高齢者の有効活用に非常に効果的であることが証明されたそうです」。

 テレワークを含む一連の働き方改革の結果、2016年度は2008年度に比べ、社員数が9人増えたにも関わらず、ガソリンの使用量は83%、本社の電力使用量は75%に減少、平均労働時間は2,100時間から1,800時間に削減されました。その間、売上は倍増しています(*5)。また、採用をかけると、同社の取組みを知って働きたいと希望する人が、全国から数百名も応募してくるようになりました。

 ワークライフバランスを重視して、無駄な残業を減らし、社員のストレスを排し、生産性を向上して生まれた時間をスキル向上や資格取得の勉強に充てるなど、社員とその家族の幸せにつながるようにした施策が好循環を生み出しているようです。

 富樫さんは、中小企業こそテレワークを積極的に導入すべきだと語ります。

「テレワークは中小企業にとって、離職防止や人材確保に有効です。テレワーク導入後、働き方が変わって生産性が上がることにより、売上げが増加しコストを大幅に削減できた上記のような事例もあります。テレワークのメリットを多くの経営者のみなさまにご理解いただくとともに、私たちもより普及啓発に努めたいと考えています」。次回は、テレワークの準備に必要なポイントについてです。

 なお、BCP対策の重要性が叫ばれる昨今において、テレワークの導入の際に、緊急時の連絡手段を選定しておくことは必須と言えます。下記コラムでは、緊急時の連絡手段について解説しております。こちらもあわせてご覧ください。

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