2020年8月31日

先進事例から学ぶオンライン商談成功のカギ

コロナの影響で、セールスパーソンの働き方が大きく変わろうとしています。訪問営業が難しい状況のなか、積極的なオンライン商談で成果をあげている企業があります。

1.  企業がオンライン商談に取組む背景

コロナ禍に適応したワークスタイルとして、テレワークが浸透し、オンライン上でのコミュニケーションが広がりを見せています。直接顧客のもとへ伺う
ことの多い営業も例外ではありません。イベントの中止や訪問の自粛により、新規顧客の獲得が難しい状況に陥ったことで、業務の進め方や顧客とのコミュニケーションの転換が求められています。このような背景をうけ、オンライン商談が新たなスタンダードとして受け入れられるようになっています。

そのような中、コロナ禍以前よりオンライン商談に取組んでいる会社があります。クラウドで利用できるマーケティングツールを提供しているMtame株式会社(エムタメ)は、訪問営業を一切行わず、オンラインのみで商談を行っています。過去2年間にオンライン商談のみで数百社近くの新規顧客を獲得した、Mtame社のMAコンサルティング部オンラインセールス課マネージャーの橋口 浩暉(はしぐち こうき)さんに、オンライン商談の成功の秘訣についてお話をうかがいました。

2.  オンラインセールスとは

コロナショックにより、在宅勤務などのテレワークが推奨され、顧客を訪問する「訪問型営業」が難しい状況になっています。営業担当者は、電話やWeb会議システムなどを利用したオンライン型の営業活動への移行を求められるようになりました。このように訪問営業を行わずに、オンラインで商談を進める営業活動を「オンラインセールス」と呼んでいます。

Mtame社の営業はインサイドセールスとオンラインセールスの2チームで分業体制を取っています。インサイドセールスが、Webメディアからの資料ダウンロードやトライアルに申込まれた顧客などから商談機会(リード)を創出するのに対し、オンラインセールスは顧客の獲得(商談、受注)を主な目的にしています。

Mtame社がコロナショック以前から全国各地の顧客を対象にほぼすべての商談をオンラインで行う理由は顧客営業の効率化戦略にありました。営業にかける時間や交通費などのコストを削減し、効率のよい営業をめざし確立した営業スタイルがオンラインセールスでした。Mtame社の長年にわたるオンラインセールスの経験から、オンラインセールスのメリットはもちろん、デメリットも見えてきました。

3.  オンラインセールスのメリット

オンラインセールスのメリットは大きくわけて3つあげられます。営業を行う側だけではなく、顧客にもメリットがあります。

1)営業業務の効率化
・移動時間がないので、効率的に商談が設定でき、商談件数が増加する。
・どんなに遠方の顧客でも、距離に関係なく商談でき、移動コストもかからない。
・説明資料の印刷や会議室の予約などの準備が不要になる。

2)ノウハウの蓄積・共有・活用が容易
・オンラインセールスの内容を録画・録音して共有、可視化することで、会話の内容についての指導や、セールスの質を高めるためのアドバイスも行いやすくなる。
・自分の商談・会話を客観的に見て、トークスキルの向上につなげることが可能。
・新人からトップセールスまでが共通で使うアプローチブックなどで、ノウハウの共有やセールスアプローチの均一化が容易になる。
・オンラインセールスが未経験の新人でも短期間で戦力として活躍できるようになる。

3)顧客にとってのメリット
・顧客にとっても会議のための準備が不要。
・顧客が気軽に営業の話を聞くことが可能。
・在宅勤務などのテレワーク環境でも、営業と話すことが可能。
・セールスの手元にある資料なら、Web会議システムにより、その場で共有可能。

4.  オンラインセールスのデメリット

一方で、3つのデメリット(懸念)も発生します。

1)顧客にある程度の負担が生じる
・顧客にある程度のITリテラシーと環境が必要で、十分でないと円滑な進行が難しい。

2)顧客とのきめ細かなコミュニケーションが困難。
・視覚情報が限られるので、表情や仕草から顧客の気持ちを汲み取ることが難しい。
・スムーズな会話を実現することが難しい。

3)顧客の気持ちや行動を、セールスがコントロールすることが難しい。
・顧客との距離が遠いだけでなく、心の距離も遠い状態で商談がはじまる。
・営業担当が訪問していない、名刺交換がないなどの理由から、ある程度の不信感が発生することがある。

5.  オンラインセールスのデメリットを乗り越えるポイント

上記のようなデメリットが存在するオンラインセールスでは、大前提として、「良質な顧客体験の創出」が重要になります。オンラインで不都合を享受しながら打ち合わせを行うと顧客側も負担に感じます。

オンラインセールスの問題点である顧客への負担やコミュニケーション不足などのデメリットを乗り越えるために、橋口さんが実践したポイントは、大きくわけて2つあるとアドバイスをいただきました。

ポイント1:顧客の不信感を払拭し、信用を築く

顧客の不信感を払拭する対策として、自己紹介からはじまるストレスのない会話が重要です。不信感を払拭するために、商談の開始直後に商材を紹介せずに、自己紹介から入ります。自己紹介は、顧客との最初の会話です。そこで、インパクトのある会話を実現することを心がけます。

次に、顧客と共有できるテーマを探し出します。業務内容、同業種での経験・実績、ビジネスモデル、出身地などがよい反応を得られることがわかりました。また、何か1つ、「この営業担当者は期待が持てそう(凄い)」と感じていただけるような過去の実績などを数値に基づいて話し、その後に少し砕けた会話を心がけています。信頼感と親近感を与えることで顧客の関心をつかむためです。このように、顧客がどのような会話を好むかを会話の早い段階で察知することで、信頼関係の確立とストレスのない商談を実現します。

その後はヒヤリングに徹します。資料を請求された理由などから、顧客の状況や課題を聞き出し、顧客が求めるものを把握することに注力します。自社が最善のサービスを提案できるとオンラインセールスが判断すれば、資料を使った説明に入ります。他社の製品・サービスが合っていると判断した時には商談は行いません。

ポイント2:顧客の温度感を把握する会話

顧客の温度感の把握が難しいことは、訪問営業を経験した人が必ずといっていいほど口にする悩みです。訪問営業と比べ、画面上で共有している資料を顧客がこちらの話の流れに沿ってしっかり見てくれているのかがわかりにくいです。さらに、相槌などのリアクションもないことやわかりにくいことが多いため、営業の説明を理解しているか明確でないといった状況が発生します。

顧客の温度感を適切に把握するために、2つの対策を行っています。1つ目は指示語の活用、2つ目は主体的な回答を引き出す質問の投げかけです。まず、指示語(こそあど言葉)の「こ(これ、この、ここ)」「そ(それ、その、そこ)」などを意図的に使用して、顧客の興味が営業の説明に追いついているかどうかを把握します。たとえば、「ここについてはどう思いますか?」「このページの4つの手法だったら、一番使えそうなのはどれですか?」というように、あえて指示語を使います。指示語は多用すると顧客側のストレスになるので気を付けないといけませんが、時々少し曖昧な表現を用いることによって、顧客の理解が進んでいるかを確認します。

次に顧客の主体的な発言を引き出すための質問です。「はい、いいえ」の答えを避けて、顧客の主体的な発言を引き出すテクニックとして、Whyではじまるオープンクエスチョンを多用する営業もいますが、Whyを多用されると回答する側は疲れてきます。質問のなかに、5W1Hを細分化して含めて、回答しやすい質問を投げかけることで、顧客がストレスを感じにくい会話を実現します。

6.  「オンライン」だからこそ商談が成功するカギは?

橋口さんは、オンラインならではの商談成功のポイントを語ってくれました。「オンラインセールスが主に使うのは、Web会議システムとIP電話システムです。画面共有などのコミュニケーションと、音声によるコミュニケーション手段を意図的にわけることにより、回線の混雑などを避け、快適なコミュニケーションを実現しています。さらに、IP電話システムの音声は、音声解析システムを使って分析しています。どのような商談が受注しやすいか、失注しやすいかなどを、AIを使って自動的に分析しています」。

実際に2020年2月~4月のオンライン商談を対象に音声解析で分析した結果が下記の図です。
10項目程度を分析し、受注との相関関係が見られたのが「話す速さ」と「沈黙回数」です(図1)。
1)顧客よりも相対的にゆっくり話す方が受注する
2)会話が3秒以上沈黙する回数が多い方が受注する

図1:オンライン商談を音声解析した分析結果

オンライン商談を音声解析した分析結果

橋口さんは、オンライン商談の最大のメリットは、「データ蓄積・活用」にあると指摘します。
「オンライン商談は、商談に関するデータの取得が容易なので、ノウハウの蓄積・共有・活用が容易です。つまり、誰でも売れる仕組みを作りやすいという価値があると考えています。訪問型営業に比べ、オンラインセールスでは営業の成否を左右する要素が『言葉』以外には少ないため、成功の型を作りやすい点が最大の強みです。当社のオンラインセールスでは、商談の記録はすべて残っています。いくらでも勉強できる環境があるので、新人でも1か月半程度で初受注します。オンラインセールスに取組むまでは、初受注に7~8か月かかるのが普通でした」。

7.  働き方改革にもつながるオンラインセールス

また、働き方改革の点でもオンラインセールスのメリットがあると橋口さんは言及しました。
「場所に関係なく働けることもオンラインセールスの大きな価値です。プライベートにおける自己実現と、業務との両立が圧倒的に容易になります。このことは、働き方に敏感な若い世代の人にとって大きな魅力ではないでしょうか」。

8.  まとめ

以上、オンライン商談成功のカギについて、橋口さんのお話をもとに見てきました。コロナショックがもたらしたニューノーマル時代に、「オンライン商談」は営業のニューノーマルとして身につけるべきスキルとなってゆくでしょう。

   

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